国税庁の統計情報によると、平成16年度に相続税申告書が提出された相続において、相続財産として土地や家屋・構築物などの不動産を残された方は9割を超えていることがわかりました。多くの方が経験するであろう不動産の相続。今回は、相続の中でも先延ばしにされがちな相続登記についてのお話です。
通常、不動産の持ち主が変わったときには不動産登記をします。特に相続によって不動産を取得した場合は「相続登記」といって、「相続を原因とする権利関係の変動」があったことを公示することになっています。
実はこの相続登記には義務も期限もありません。相続税申告の場合は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うこと」と決められていますが、相続登記はしてもしなくても良く、また、いつしても良いのです。
そのため、相続によって不動産を取得しても相続登記をしない人や先延ばしする人がいます。相続登記は義務ではありませんから、相続登記をしなかったとしても法的に罰せられることはありませんが、後々さまざまな不都合やトラブルが生じる場合があるため、注意が必要です。
まず、相続登記をしなければその不動産を融資の際の担保にすることができません。また売却することもできません。たとえば「資金がすぐ必要!」といった緊急事態に、対応の選択肢が狭まってしまうのです。
さらに問題なのは、相続争いが生じてしまう(再燃する)可能性があるということです。
法定相続分通りに相続財産が分割された際の相続登記には「遺言書」や「遺産分割協議書」が不要となるため、法定相続人であれば他の法定相続人の了解が無くても、自分の相続分について相続登記をすることができるようになっています。
もし、それが悪意をもって行われ、さらにその相続分が善意の第三者に譲渡されてしまったような場合、その相続分を取り戻すのは非常に困難なのです。各種判例でも、こうしたケースでは本来の持ち主よりも善意の第三者の権利が優先するとされています。また、詐欺などによる同様の事例も無いわけではありません。
また、このような争いはすぐに生じなくても、相続登記がされないまま世代が重ねられていった場合、さまざまな問題を引き起こす火種にもなりかねません。
相続登記に限らず登記というのは自ら、そして家族の権利を主張し守るためのものでもありますから、できるだけ早く行うことが望ましいのです。
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