一般の中小企業では、登記されている役員=役員、といったイメージをお持ちの方がいらっしゃると思います。基本的に、会社運営上はそれで問題はありません。
会社法において役員とは、取締役、会計参与、監査役を指します(第329条)。また会社法施行規則においては、これに加えて執行役、理事、監事その他これらに準ずる者も役員と規定されています(第2条3-3)。
しかし、法人税においては、登記されている役員とは別に「みなし役員」という制度があります。みなし役員とは、法人税法においてのみ役員と同じ扱いをされる者のことです。
みなし役員と認定されるのは以下のような場合(者)です。
■法人の使用人以外の場合
たとえ、役員として登記されていなくても、会長や副会長、顧問、相談役など「その地位・職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められる者」
■同族会社の使用人の場合
以下のすべての条件を満たす法人の使用人で、「実質的に法人の経営に従事していると認められる者」
・株主グループの所有割合が大きいものから順位を付けて、第一順位から第三順位の株主グループの所有割合の合計が50%超の場合に、その使用人がその株主グループのいずれかに含まれている事。
・その使用人の属する株主グループの所有割合が10%超であること。
・その使用人と配偶者の所有割合が5%超であること。
※所有割合とは出資額(発行済み株式数)、または議決権の保有割合のこと
どちらの場合でも難しいのは「実質的に法人の経営に従事」しているかどうかの判定です。
これについては、その者が、法人の経営方針や販売計画、仕入計画、生産計画、設備投資計画、従業員の採用、従業員の給与の額、融資条件、保険条件など、重要な経営上の決定事項にどれほど関与しているかを総合的に判定されることが通例です。
みなし役員と認定された場合は、一定の役員賞与を除く役員賞与の損金不算入、過大役員給与の損金不算入、過大役員退職金の損金不算入、役員に対する資産の低額譲渡など、役員給与に係る法人税上の諸制度の縛りを受けることになります。
また、同族会社の使用人がみなし役員とされた場合、その者は使用人兼務役員にもなれません。
みなし役員にあたるかどうかの判定について、課税当局と意見の相違が生じるケースも少なくありませんから、対応には十分な注意が必要です。
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