設計者の教育は、どのように行われているのでしょう。
会社に入ると、すぐに設計部門への配属になるケースもあれば、最初は生産現場に配属になり、ある程度自社の製品を理解した上で、設計部門に配属になるケースなどがあります。
それでは、設計部門に配属になったあと、どのような手順で設計能力を高めていくのでしょうか。
大手の製造企業であれば、製品の実験作業や実機テストなどの作業を進めることによって、自社製品の特徴や構造、性能などを理解する。
つぎの段階で、製品開発のプロジェクト・メンバーとなって、与えられる役割を担当することによって、設計者としての能力を高めていくことになるでしょう。
しかし、このようなステップや手順を確立していない会社も数多くあります。そのような会社では、どのように教育しているのでしょうか。
一般に多いのは、プロジェクトの大小に関係なく、上司や先輩設計者のサブとして指示を受けながらOJTで学んでいくことです。
したがって、上司や先輩技術者のまねをすることから始まるわけです。
そして、経験を重ねることによって能力のアップを図っていくことになります。
このため設計者は、新しい製品を開発するにあたって、過去に作成した製品の図面をもとに、それらを基本構造の取捨選択を行い、肉付けして作成するのです。
しかし、これだけでは、過去のものまねでしかなく、新規性のある製品を作っていくことにはなっていかないでしょう。
ある会社からどの程度のコストダウンが可能かという依頼で訪問したときのことです。
この会社は、工場の生産ラインで使用する設備機械の受託開発をしています。
近年、価格競争が激しさを増してきて、受注してもその利益が減少してきているため、収益性の改善が急務であると判断したことによるものです。
訪問した際に、数枚の図面を見せていただきました。その中に、動力伝達用のシャフトの図面がありました。
このシャフトは、長さ1.5m程度で、途中途中に、このシャフトからほかのシャフトに動力を伝えるためのベルトをかけるプーリーの形状が12個ありました。(プーリーの直径が200mm程度、シャフト部が40mm程度)
作り方は、一本の太く丸い棒状の材料から削る出して作ることになりま
す。
そして、このシャフトと類似して、プーリー形状の箇所数が異なる図面が数多くあることの説明を受けました。
このシャフトについて、どの程度コストダウンの可能性があるのかを問われました。
このとき、調達部門の担当役員が出席していて、現行の購入価格を聞いて、「このシャフトは高い。何故、こんな値段で買っているのだ。」と購買部長を叱責していました。
購買部長は、担当役員からの指摘に黙って、私の回答に期待をしていました。
確かに、この状態のままでも、十分にコストダウンの可能性はあります。
それと同時に、何故このような形状を選択したのかという問題が湧き出たのです。
丸棒から全て削り出すため、素材の重量の半分以上を削って取り除くことになるのです。
このような形状にするのではなく、ストレートのシャフトとプーリーの2部品に分け、各々を作り、組立時にネジ止めにする方がよいのではないかということです。
現状では、このシャフトを加工するために大型の旋盤とクレーンが必要になります。
しかし、2部品に分ければ、一般に使われる旋盤で十分に作ることができます。
また、類似しているシャフト、とくにプーリーの数が12個以外のものについては、共通で使うことができ、大幅なコストダウンが図れることになります。
何故、このような形状にしているのか疑問を感じて、出席していました設計者たちに質問をしました。
その回答は、従来からこの形状で設計していたので、何ら疑問を持っていなかったのです。
つまり、過去誰かが設計した図面をもとに新しい製品を設計しているだけであったのです。
もっとシンプルに、あるいはもっと作りやすくなど、現状に対して疑問を投げかけ、新しい構造を作り出すチャレンジ精神を持っていることが必要ではないでしょうか。
そのための大きな着眼の一つとして、コストに関する知識の向上を進めるべきです。
製品のコストダウンをどのように進めたらよいのか企業の第一の目的は、利益の獲得にあります。その経営活動は、結果として数字で表れされます。企業が、維持存続し、成長していくためには、この数字のからくりを理解し、経済性を高めることが大切です。それは、ただ数字を眺めているだけでは分かりません。やはり、経営活 …
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