■このコラムでは、日常生活や新聞・雑誌などで目にした「お客さま発想な商品やサービス」の事例を取り上げ、その企業の担当者になったつもりで想像し、その商品のコンセプトを作るまでの「仮説の目の付け所」や「マーケティング調査の活用方法」を皆さまにご紹介しています。
◎読んで得するポイント!⇒ 他業界の事例でも「関係ない」とお考えにならず、「自社に応用できるところはないか?」という視点で、何かのヒントにしていただけると幸いです。
●今回のお客さま発想事例 ⇒ 「消費者の「後ろめたさ」を販売に結びつけるには?」
こんにちは! マーケティング イノベーションの鈴木規子です。
マーケティング調査からの商品開発では、不満点の解消でのヒット商品が多くありますが、今回の商品の場合は、その着眼点(気付きのセンス)が重要なポイントとなっています。それをいかに一般的なセンスの人でもできるようになるか、についても解説しています。
◆今回のご紹介記事:
「忙しい朝。主婦がイライラしがちなのが弁当の余熱を冷ます時間。
特に子供がいて仕事に出なければならない主婦ともなればなおさらだ。
そんな悩みを解決しようと、小林製薬が開発したのが「あら熱と〜る」。
風邪による発熱時などに使うアイス枕を応用した、いわば弁当用アイス枕。
開発力が自慢の同社ならではのアイデア商品だ。
弁当が冷めないうちにふたを閉めてしまうと詰めたご飯がふやけたり、
おかずが傷みやすくなったりする。「あら熱」が冷めるのを待ってからふたを
閉めるのが一般的だが、冷ますのに必要な数十分はことのほか長く感じるようだ。
日用品マーケティング部の里村氏がこんな主婦の悩みを知ったのは約二年前。
「弁当のふたを閉めるために待つ時間が面倒に感じる」という、子供を持つ
女性社員の声を耳にしたからだ。
発売は今年の三月。スピード開発が特徴の同社にしては眺めの開発期間となったのは、「実は本当に受け入れられえるか心配だったため発売を伸ばしていた」からという。
ただ、事前に行ったモニター調査で約八割が「買いたい」と回答。一般消費者も参加した昨年七月の同社開催の商談会でも「哺乳瓶が冷やせるなど、汎用性がある点が評価され商品に確信を持った」という。
厚さは約5ミリメートル。折りたたんで、冷凍する前のご飯を包むこともできる。単身者にも好評という。
初年度の売上げは、出荷金額ベースで1億7000万円を見込む。「食中毒の
心配が増す6月ころから需要が本格化するのでは」と期待している。」
(07年5月25日 日経MJ)
---記事抜粋はここまで---
この商品開発での注目ポイントは2つありまして、
一つ目は、
「弁当のふたを閉めるために待つ時間が面倒に感じるという、子供を持つ
女性社員の声」をピピッとキャッチできた、里村氏の「気付き力の高さ」です。
同じことを他の人が聞いても、このような商品にまで昇華できたかどうか・・・。
アンケート調査結果の分析でも同じようなことがありまして、
実はマーケターによって、その後に続く企画提案のレベルにかなり差が出ます。
やはり経験の少ない人や気付き力の低い人は、調査結果の中の
「少数意見でも何かのきざし」であるものや、「意味のあるキーワード」を
気付き損なう、集計した数字の意味を読み間違うといったことがあるんですね。
世の中にはチャンスがたくさん落ちていますが、チャンスを拾うには
「ある能力」が必要だそうです。
チャンスの神様は前髪しかないので、
チャンスに出くわしたときにはすぐにその前髪をつかめ!(後ろ髪がないので、一瞬でも遅れるともうつかめないということだそうです)と言われていますように、
普段経験している事がらの中で、「これがチャンスだ!(あるいは商品開発の
タネだ!)と「気付くことができる能力」が大切なのです。
そういう意味で、里村氏が「女性社員の声というチャンス」にきっちりと
気付き、それを完成した商品にまで育てた点が本当に素晴らしいですね。
二つ目は、
「自社の技術を別のターゲット・用途(機能)に応用する発想力」です。
あら熱と〜るの場合は、アイス枕の「硬くならなくて冷やせる素材」を応用して
いますが、こういった「他のターゲットや用途(機能)に応用できないか?」は
メーカーの経営者やお勤めの皆さまにも、参考になるのではないでしょうか?
■ここからは、この事例について「消費者調査をしたとしたら・・・」という過去にさかのぼった私の妄想の世界です。
あら熱と〜るは女性社員の声をヒントに開発されていますが、この商品のコンセプトを、何もないところから消費者調査で一から発想するのは、かなり難しいのではないかと思います。
この商品自体は
「主婦が朝、弁当を準備しているときの、あら熱を取るための待ち時間の
イライラを解消する商品」、つまり不満解消型商品ですが、
難しい点は
「主婦がお弁当を作っているとき、余熱が冷めないことにイライラしている」
ことに「気づくこと、目をつけること」ですね。
これに着眼できるのは、
・開発者自身が主婦であり、自分の不満から発想
・開発者が自分の奥さんの不満・愚痴をヒントに発想(今回の女性社員の声も このケースです)
といった場合だと考えられます。
もし、消費者調査を実施するとしましたら
パターン1:アンケートかヒアリングを主婦に実施して、
「生活上で、家事での不満を感じたり、イライラすること」を
朝から晩まで一日中の行動記録と一緒に、そのときの気分も記録してもらう
(かなり詳細に記録できるように、アンケート自体の工夫が必要ですが)
パターン2:主婦の家の中での行動を一日中ビデオで記録してもらう
パターン1の場合は、自分で記入式なので、無意識な行動などは抜け落ちて
しまいますが、パターン2の場合は客観的な記録ですのでその心配は無く、
たくさんの人数に調査すれば、「お弁当を作っているとき、余熱が冷めない
ことにイライラしている様子」には遭遇できそうです。
・・・ですが、
「主婦の生活実態についての基本データ収集」といった目的があるなら
別ですが(^^;)、通常はこのような大枠の調査はせず、仮説を立てて
調査をします。
たとえば時間帯で切って考える場合なら
主婦の調理時の不満 > 朝食準備時の不満 > 弁当準備時の不満
というように絞っていき、そのときの主婦の人の行動や気持ちを想像しながら
仮説をたてていきます。
ということで、今回は消費者調査からは発想しにくい商品開発を取り上げてみました。
当社では、このような高度な気付き、発想を社内でできるようにするコンサルティングをしています。
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はじめまして。株式会社マーケティングイノベーションの鈴木規子と申します。このたびは「社内マーケティング力躍進サービス」の資料請求ありがとうございました。早急に御社の調査課題解決のご参考になるような情報も付加して、資料をお送りさせていただきたいと存じます。今後とも宜しくお願いいたします。株式会社マー …
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