ISO9001を認証取得するためには、審査費用や社内スタッフの人件費、それにコンサルタントへの支払報酬など様々なコストを強いられます。
品質マネジメントシステム・ISO9001を認証取得している事業者数は全国で約4万社にも昇ります。これらの大半は従業員数 300名以下の中小企業で占められていますが、かかる費用以上にISOが経営にメリットを本当にもたらしてくれているのだろうかと思い悩む経営者を多く見かけます。
果たして、ISOは中小企業にとって救世主なのか?それとも厄介者なのか?
中小企業ISOサポートセンターが実施したアンケートを手がかりにそのことを探ってみます。
ISO9001の「経営への効果」についての回答を見ますと、「効果あり」41.1%、「効果なし」58.9%、ほぼ4:6の割合に分かれました。
アンケートデータを詳しく分析すると、効果の有無には「ISO認証取得の目的」が大きく影響していることが判りました。
すでにご承知の方も多いと思いますが、ISOを認証取得する(した)企業の大半は「商取引上のパスポート」を手に入れることを目的としたケースが多いのです。
製造業であれば、取引先から直接的間接的な要求に応じるため、やむなくISOを取得した企業が多いし、建設業では、公共工事に入札する条件としての格付け評価点数を上げるためにISOを取得しているケースが大半を占めるということなのです。
こうした受身的な取得目的では、プラスアルファの効果を手に入れることができないことをアンケートの分析結果は物語っています。
★「受身的な目的」でISOを取得した企業の回答結果
「効果あり」30.8% 「効果なし」69.2%
★「主体的な目的」でISOを取得した企業の回答結果
「効果あり」52.8% 「効果なし」47.2%
ちなみに、業種別に見ると次のような結果になりました。
★製造業:「効果あり」53.7% 「効果なし」46.3%
★建設業:「効果あり」21.7% 「効果なし」78.3%
十数年ほど前、建設業で起こった急速なISO取得ブームにより、ISOという看板だけ欲しがった経営者が多かったことが伺いしれます。
このアンケート結果により判るのは、ISOに何を期待しているのか、目的意識はどうなのか、そのことが結果の違いを生むとということです。
これまで数多くの企業でISOに関わってきた自分のコンサルタント経験からも感じていたことでもあります。
これからISOを取得しようと思っておられる経営者の皆さん、またISOをどのように活かそうかと悩んでいる経営者の皆さん、まず経営上の課題を明確にし、それをマネジメントシステムのISOで解決する方向を考えてみて下さい。
中小企業経営にとって、ISOは善なのか悪なのか。
どうやら、それはISOそのものの問題というのではなく、それを活用する経営者の意識の問題で決まるようです。