怒りを溜め込み、上司の悪口を言う困った部下 タイプ6対策
神奈川にある大手環境関連企業での話。
海外事業部のD課長の下で働くA君は、入社10年目の係長。
A係長の仕事ぶりは大変まじめで、責任感も強く、上司の意向に逆らわないのでD課長は、A係長を頼りになる存在として様々な業務を命じていた。
またA係長は、上から次々と降りてくる仕事を、上司の命ずるままに全てこなそうと努力し、家にもほとんど帰らないほど残業を続けていた。
A係長は、業務ばかりではなくプライベートの時間も上司の指示に全て従おうとしていたのである。
例えば昼食事に自分の食事を終えていても、上司から誘われると断らず、何も言わずについていき、2回目の食事を一緒にとるほどのイエスマンだった。
本人は、休むことは負けることと、上司の命令が聞けないのはあってはならないことと、異常な責任を自分に課し、自己陶酔していたのである。
また、一見は仕事熱心な素晴らしい社員に思えますが、裏に回れば、上司のD課長の悪口ばかり言っていた。
「D課長のパワハラはひどすぎる」とみんなに訴えたかと思うと
「D課長は何もかも仕事を押し付けるが、上司は自分がいないとダメになる」
そして「こんな上司の下では、自分は殺される」・・・とも。
このように、忠実、誠実であろうとし、上司の意向に決して逆らおうとしない
気質を、エニアグラムではタイプ6に分類する。
しかし、過剰な我慢を上司に伝えず、自分だけが仕事を抱え込んで責めを負うような仕事ぶりはあまりに異常である。
A君が皆に言ってまわった悪口と、自らが奴隷のように振舞う勤務態度が人事部の耳にも届き、D課長に大変なことが起きた。
春の定期異動で、D課長は左遷という憂き目にあったのだ。
この様子のすべてをじっと観察していた、ある人物がいた。
それはA係長の部下のC主任(女性)である。
C主任は、A係長が、少しずつ壊れ始めてきたのを察知していた。
そしてC主任は、とうとうある行動に出たのである。
C主任は以前、米国サンマイクロシステムズに勤務しており、既にエニアグラムを学習していた。
※サンマイクロでは、エニアグラムを全社員が活用しています。
(参考: http://developers.sun.com/toolkits/articles/personality.html)
C主任は、A係長が、不健全な状態にあるタイプ6であることを見抜いた。
タイプ6が精神的に健全性を失うと、自己憐憫の世界に身を置く。かつタイプ6の特質である責任感がマイナスに働き、全てを抱え込み、業務の調整能力が失われてしまうのである。
仕事は渋滞しているが、オーバーワークな状態であることを上司には訴えず、我慢することで他者依存するのである。
そこでC主任は、事態を改善するため、A係長におおよそこのように伝えた。
「A係長は非常に責任感の強い方ですね。あなたの我慢強さ、誠実さは皆、理解していると考えます。それ故に、苦しんでおられるように私には見えます。
その責任感の強さゆえに主体性を持った生き方を失っているということは無いでしょうか?誰でも、全ての責任を取ることは不可能です」
「A係長は、もっと自己を信じて、その奴隷のような自己憐憫に浸った考え方をやめ、自分に生きることを選択しないと、あなたばかりではなく、上司が左遷されたように、不幸のチェーンで周りを連鎖していくことになりますが、あなたはどうするつもりですか?」
「『どうせ、俺なんか』と言って、自分を責め、蔑んで生きることでは、お互いの解決にはなりません。あなたはあなたの生き方でよいのではありませんか?」
このようなことを、時間をかけて、伝えていったのである。
すると、A係長の行動は徐々に変化していった。
上司に自分の業務状況を報告し、仕事量の調整が出来るようになり、昼食に誘われても「いえ、自分はもう済みましたので」ときちんと断れるようになったのである。
その後、本人に聞くと、以前に比べ、大分心が軽くなったような気がする、とのことである。
コンテンツ協力:株式会社エニアグラムコーチング